NoName

Open App

 覚えている。
 シロツメクサの上を舞う、モンシロチョウの群れのあどけなさを。
 覚えている。
 自らの足で踏み荒らしたクローバーの中から、強く育った四つ葉を見付けて喜んだあの無邪気さを。
 覚えている。

 爪先の鱗粉も、擦れる翅の感触も、小さな生命が掌の中で静かに終わる、その刹那も━━幼気な残虐さの前では、ただの玩具に過ぎなかったことを。

5/10/2024, 2:26:29 PM