蟹食べたい

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12/11 「何でもないふり」

夜空に浮かぶ星は想像もできないほど遠くにあるんだと思っていた。
だから、どんなにまぶしくても手を伸ばすことはしなかった。
けして届かないと思っていたから。
そんなものに焦がれ続けるのは無駄だと思い込んでいたから。
けれど、彼女を見て思った。
そんなこと関係ないと高らかに声を上げる彼女を見て思ってしまった。

「さぁ、私の手を取って!」

たとえ届かなくても、たとえ砕けてしまったとしても。

「やろうよ! 全力なんて生ぬるい」

私もあの輝く星に手を伸ばしたいと。
憧れを憧れのままで終わらせたくないと。

「そう…」

「「命を賭して」」

視線が交わった。
彼女の表情が一瞬きょとんとして、その後満面の笑みに変わる。
果たして私はうまく笑えていただろうか?
跳ねる。
自分でも分かるほどに。
高鳴る鼓動が煩いほどに鼓膜を揺らす。

あぁ、駄目だ。
もう…
何でもないフリなんて出来ない。

12/11/2024, 12:33:51 PM