ひらり、ほらりと白いもの。
シャーベット? ダイヤモンドダスト?
それとも天使の涙?
どのように例えよう、粉のように小さき雪を。
天寧の空に手を伸ばす王女。
この上ない喜びの表情で、久しぶりに見る天然を掴もうとする。軽い、軽い、掴もうとしても、彼らはひらりと身を躱す。
掴もうとするから取れないんだ。
王女は自分の手を制止して静止させた。
ひらり、ほらりと白いもの。
風に飛ばされた婉曲的恋愛の軌跡。
妖精のように、自由の翼で彼女の手のひらへ。
着地した。それをそっと、口の近くに持ってきて、ふぅっと吐息を投げかけた。
小さな小さな氷の粒は、溶けることなくそのままでいた。
どうやら雪ではない。たぶん、花粉。
彼女は花粉症。この城も花粉症。この先も世界は、宇宙は、ずっと花粉症。
――この花粉はどこから来たのかしら?
たぶん、いや、おそらく。
彼女の心の中は本音を炒めた。
この城の主である王子は、ずっと前からいない。
王女は魔族の王女であった。心の中のように、ずっと前から平和を標榜として、孤閨をかこっていた。
だからずっと花粉症なのだ。
鼻水が目から出てしまって仕方がない。
3/4/2025, 9:54:27 AM