光と霧の狭間で
提灯の光だけが、今、歩ける道標となっている。
霧が濃くて、足がおぼつかない。前が見えない恐怖というものは、どうも俺の精神を削る。
どうして今、こんな事になっているのか、あまり記憶が無い。
確かに覚えていることは、足を滑らせてしまったことだけだ。隊士達と共にいたから、探してくれているといいのだが。
あれから数分、歩いていたところで遂に足が働かなくなってしまった。その場に座り込んで、息を整える。
「……はぁ」
無意識に、ため息が出てしまう。任務で怪我を負ったわけではないのに、こんなにボロボロになってしまった。
人に心配されたくはない。心配されることは、無駄だからだ。
霧が段々と濃くなっていき、挙げ句の果てには目の前にある提灯でさえも、靄にかかっているようだ。
早く誰か来て欲しい。でないと、体力の限界が訪れてしまう。
光を細い目で見つめる。水の中で見る景色のようで、何処か苦しかった。
すると突然、光と霧の狭間で、闇が見えた。いや、あれは闇なのだろうか。闇にしては、どうも内部が輝き過ぎている。
「…………!」
何か叫んでいるのだけは分かった。だが、俺の体力は、尽きてしまったようだ。
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「おい、斎藤」
「……っ、痛い…」
「あーあー、無理すんな。寝てろ」
目を開くとそこはいつもの屯所だった。
起き上がろうとするも、痛みに襲われて左之助に叱られた。
あの時の闇の正体はきっとコイツだろう。光と霧を差し置いて見えるのは、コイツくらいしかいない。
「すまない。いや、すまなかった」
左之助は御法度である団子を頬張っている。
「話しかけてるのに無視されるなと思って振り向いたら、お前が居なくてよ。めちゃめちゃ焦ったわ。見つけたら気絶してるわ血流してるわで大変だったんだぞ」
そう左之助に言われ、自分の腕を見てみる。するとそこに見えた景色は白い包帯が巻かれており、荒んだった。
「……お前は、光にも霧にも負けてなくて、いいな」
「お、おう?ありがとう?」
褒めてはいない。いや、褒めているか。
「危険との狭間で助けてくれるのはお前だけだ……」
「……そうか」
珍しく褒めると、左之助は視線を逸らしてしまった。
10/18/2025, 10:40:00 AM