「なんで早く言ってくれなかったんだ!」
大声で、あなたが叫ぶ。
初めて真正面から対峙したあなたの顔は、険しく歪んでいた。
「俺はお前が一番の友達だって思ってた!」
嘘つき。
私とあなたは、好きなものも、大切なものも違った。
あなたは、最近はいつでも、息抜きをしたがった。
「俺とお前との連携は、サイキョーだったじゃないか!」
嘘つき。
私とあなたの足並みは揃わなかった。
あなたが、一緒に戦う仲間は私じゃなくて、あの人だった。
「お前はサイコーの仲間だと思ってた」
嘘つき。
「お前が変に誤魔化さなければ!教えてくれれば!俺だって一緒に背負ったさ!」
「俺はそんなに不甲斐なかったか?信用なかったのか?!」
あなたの顔は、後悔に歪んでいる。
「お前はいつも言っていたろ!『正直は宝』って!」
そう。私はいつも正直だ。
今までだって、正直に生きてきた。
あなたをそれほど信用していなかったから、私はあなたに色々なことを誤魔化したし、何も大切なことは話さなかった。
あなたを裏切るつもりだったから、良好な関係でいられるように、話す情報をコントロールした。
あなたにとって私が一番でないように、私にとってもあなたは一番ではない。私はただ、それに正直に従って行きただけだ。
あなたとの道中はまあまあ楽しかった。
あなたたちは嫌いじゃなかった。むしろ気に入っていたかもしれない。
でも、正直、一番じゃない。
それが全てだ。
だから、さようなら。
あなたも、みんなも、この世も、私も。
さようなら。
正直はやはり宝だったよ。
私はそう自分に言い聞かせて、あなたたちの方へ向き直る。
手に入れたばかりの力が氾濫している。
身体には、いつもとは比べ物にならないほどの力が満ちている。
「お前がする必要はないだろ…」
強い声で、でもやけに弱々しく響く言葉が聞こえた。
あなたはまだ何かを叫んでいる。
ゆっくりと目を閉じ、開ける。
張り詰めていたはずの空気が、ふわりと揺らいだ気がした。
6/2/2024, 3:04:54 PM