月凪あゆむ

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空恋

 私の祖母は、生前こんなことを言っていた。
「もう、じいさんも昔の仲間もほとんど、お空へ昇ってしまった。きっとばあも、そう遠くないうちに、お空へ昇るよ」

 そんな、悲しいことを言わないでほしい、とその時は思った。
 でも、なんだかその時の祖母の眼があんまりにも穏やかだったから、なにも言えなかった。

 祖母と祖父は、孫の私から見ても、とっても仲の良い、いわゆる「おしどり夫婦」だった。だからこそ、祖父の死は、祖母にかなりのダメージを与えたと思う。
 愛する人が、空へ逝ってしまった悲しみ。

 そして。
 祖母の最期の顔は、久しぶりに見るくらい、――いや。
 たぶん、祖父が亡くなってからは初めて見るかもしれないくらい、穏やかな笑みだった。

7/6/2025, 9:15:34 PM