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夜の海に旋律が響いている。

空から鳴り響くその音は、キラキラと輝きながら思考の海へと流れていく。
音に触れた海面は、エメラルドブルーの宝石となって煌めいている。

山高帽の男と白い詰め襟のコートを着た女は、その光景に穏やかな笑みを浮かべていた。

「おや、珍しい。二人で音楽鑑賞ですか」

二人の背後から穏やかな声がかかった。

「…お前がここに来るのも珍しく、久方ぶりのことだかな。ドリームメーカー」

山高帽の男にドリームメーカーと呼ばれた人物は、にこやかな笑みを浮かべた。

「素敵な音楽が聴こえたもので。今晩の夢に一欠片、いただこうと思いまして」

ドリームメーカーは思考の海から言葉を拾う──海漁りも仕事の一つだ。

最近は本来の仕事である記憶の管理が忙しいのか、思考の海に姿を見せていなかった。

今夜は、音楽に惹かれてやってきたようだ。

「良い音ですね、植物が育っていくような美しい光景を観ているようだ。それだけでなく、コツコツとひたむきに向き合う人影や時計の針が進むような時間の経過も感じられる。不思議ですね」

ドリームメーカーの言葉に、二人は静かに頷いた。

「枝葉を伸ばす植物の姿を見たかと思うと、雪が舞っている景色が見える時もあるし、美しい海岸の穏やかな波と光が見える時もある。風も光も色も感じられる。音楽とは、世界そのものだな」

山高帽の男がそう言うと、

「穏やかな明るさでありつつ、葉の煌めきのような輝きが美しく愛おしい世界よ」

詰め襟コートの女が後に続く。
二人の穏やかな顔を見たドリームメーカーは、
優しい笑みを浮かべ

「お二方の意見に同意です。ますます今日の海から、エッセンスを拝借しなくては」

そう言うと、思考の海へと向かって行った。

今日の夢はきっと良い夢になると確信しながら。

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突然の君の訪問

8/28/2024, 3:00:00 PM