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生きる意味(オリジナル)

「生きる意味なんて、軽く考えた方が良いよ」
かつて友人が私に言った言葉が脳裏に蘇った。
当時、私は子育て真っ只中。
友人は独身だった。
私の生活は全て、子供を中心に回っていた。
世の母にとっては当たり前の事だと思う。
良い教育を受けさせたいし、いじめられないようそれなりの服や道具を買い与えないといけないし、能力を伸ばしてやりたいので興味のある事はやらせてあげたいし。
旦那の稼ぎだけでは足りず働きに出たし、旦那と子供のお弁当は10年続いたし、休日は子供の部活に連れていく足になったし、自分の事は全て後回しになってしまったけれど、それで良かった。
子供達が、私の生きる意味だった。
けれど。
思春期を過ぎたあたりから会話もなくなり、何を言っても疎ましがられ、子供が何を考えているかわからなくなった。
邪険にされ、遠ざかり、家を出て、音信不通。
あんなに大事に育ててきたのに。
あんなに自己を犠牲にして尽くしてきたのに。
あんなに忙しかった毎日が、今は。
私は空っぽになってしまった。
子供が全てだったので、今さら自分の好きに生きていいと言われても、何がしたいのか、何が好きなのかわからない。
リビングでひとり鬱々としていて、突然脳裏に蘇ったのが、昔の友人の言葉だった。
当時は、誰のためにも生きていない独身の友人の事を哀れに思っていたけれど、そうではなかったのかもしれない。
自由な彼女を羨む気持ちを押し殺し、自分は不幸ではない、幸せなのだと思い込みたかっただけなのかもしれない。
私は少しの懺悔と後悔を感じながら、久しぶりに彼女にLINEを送ってみた。
彼女は今も変わらず独身で、私が子育てを終えて自由になった事を喜んでくれた。
しばらくして、彼女の推しのコンサートに誘ってくれた。LINEにはこうあった。
「推しに会えるまで生きる!」
ああ、なんてささやかで短い生きる意味だろう。
けれど、生きる意味なんて、唯一や一番を作らなくても、一つに寄りかかる事なく、都度楽しみを未来に見出していく。こういう事で良いのかもしれない。
私の世界が、新たに生まれ変わった気がした。

4/27/2026, 12:56:30 PM