"雨に佇む"
1人で向かってる途中、急に雨が降ってきた。
「……」
不思議と足を止めて空を見上げる。いつもなら頭痛がするのに、今回は一切しない。むしろ気持ち良くて、このまま雨に打たれていたいと思った。雨粒に体温を奪われて冷えていくのも雨粒を吸って服が体に張り付く不快感も何も無くて、なんだか懐かしくて、ずっとこうしていたいとさえ思った。
なんてやってたら、傘が空を覆った。正面を見るとアイツらがいつの間にか傘をさして俺のところに来ていた。きっと来るのが遅くて心配して迎えに来たのだろう。にしたって全員で来る事は無いだろ。傘が空を覆ったのは、雨に打たれてびしょ濡れになっている俺に開いた傘を差し出したから。雨粒を吸った髪から止めどなく、ポタポタと水が落ちる。その水が首筋を伝ってシャツの中に入ってくる。すると今度は、バスタオルを頭に被されて、ワシワシと髪を拭かれる。背中を押され、同時に腕を引っ張られて病院に連れてかれる。
CRに着くと、服を脱がされ何枚ものバスタオルで体中拭かれる。さっきからずっとなすがままにされて、正直ちょっとウザいなぁ…っと思ったり。それから仮眠室から引っ張ってきた毛布に包まされて、マグカップに満たされたホットミルクを差し出されて、そのマグカップを両手で受け取り、熱で手を温めながら啜ると、ホゥ…、と一息つく。ホットミルクなんて何年ぶりだろう、甘くて暖かくて美味しい。子どもみたい、なんて言われて、ムスッ、とそっぽを向く。…なんか、こういうのも、たまにはいいかと思いながらまたホットミルクを啜った。
8/27/2023, 11:01:24 AM