黒山 治郎

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此処は粗野な荒くれ者が集まる村外れの酒場だ
賞金首の情報が掲載される傾いたコルクボードに
店内にゃ日がな一日ポーカーに勤しむ奴もいて
見慣れた酒乱が良く喚めいてる此処は天国だってな
酒乱にとっちゃ天国にゃ酒があって然るべき
そんな単純で幼稚な考えなんだろうが
知らぬが仏とは上手い言葉だなと思ったよ

この店は天国の皮を被った地獄に他ならねぇ

この情報を知ってる奴は少ねぇが
この店は政府公認の処刑場だ
村外れって事もあり村の連中は
余っ程の酒好きでなきゃ足を運ばねぇ上に
村と村を繋ぐ道の途中にある店だからな
表立って出歩けねぇ連中が出入りするには
御誂え向きの立地だ、賞金首の情報も貰える
そこに鼻のいい政府連中は目を付けて
此処の店主にある取引を持ち掛けたんだよ

「監視員を一人、店内に置き
賞金首になり得る者を監視
または始末してもらいたい

勿論、店の経営を補助し報酬も弾む」 ってな

店主は悩む事も無く二つ返事で了承した
何せ時代が時代だからよ
職にあぶれず稼げりゃそれでいいらしい

なんでお前にこんな話をしたかは、分かったか?
何も知らずにぽっくり死なれちゃ腹立たしいからな
せいぜい来世は銀食器を持ち歩けよ兄弟って話さ。

                 ー 天国と地獄 ー

5/27/2024, 5:21:15 PM