〝生きる意味〟
「ごめんね、私、明日死ぬつもりなんだ」
いつも通りの帰り道で、幼馴染が放った言葉。
それは日常とはかけ離れていて、
理解するまでに時間がかかってしまった。
「ちょっと待って…」
いつも以上に心臓が五月蝿くて、思考がまとまらない。「私ね、最近部活でいじめって程じゃないけど、
いじられてて。
だからかな、生きる意味が分かんなくなったんだ。
もう、両親も生きていないし」
「…その、先生には、もう言ったの?
それに、どうして打ち明けてくれなかったの?」
「心配かけたくなくて、
私が死ぬことも言わないつもりだった。
でも、どうしてもお別れが言いたくて」
「お別れなんて言わなくていい、ずっと一緒にいてよ」
「ごめんね、もう無理なんだ。今まで本当に…」
「あのね、貴方のことが好きなの。
ずっとずっと言いたかった。
でも、女同士なんて気持ち悪いって思うだろうし、
貴方に迷惑をかけたくなかった」
「それ、ホント、なの…?」
困惑した目で、ぼうっと彼女はこちらを見つめている。
「ホントだよ。貴方といるだけで、心臓が五月蝿いの。返事は、しなくても大丈夫だよ。
答えは分かってるし、貴方を苦しめたくない。
でもね、代わりに、貴方の時間を頂戴」
「だから、私は明日死ぬって…」
「私が、貴方の生きる意味になる。
だから、貴方がそう思うまで側にいさせてよ」
「全く、しょうがないな…」
そういう彼女の目には、少しだけ光が宿っていた。
4/28/2024, 12:39:38 PM