【君が隠した鍵】

今日も鏡の前で自分の姿を見る。

筋肉、血管、髪、筋、骨格…
瞳、唇、首、胸、腹、背中、腰…

『ずっと完璧な自分』。

妖艶な体、ミステリアスな瞳、
吸い込まれそうな死んだ目、
揺らめく長い黒髪、

全部オレの1部。

この顔が嫌い。
この顔が好き。

母の目、母の言葉、母の体、

可愛くて、美しくて、憎らしい
オレの顔は 今日も何も知らなさそうにしてる。

全部母から受け継いだものだ。
オレは父を知らない。どこが似てたかも知らない。
父のような人はいたけど
全員オレの愛人になった。

母よりオレが可愛いから？綺麗だから？
本当にバカばかり。

オレが初めて誘ったのは13歳の頃。
所詮『男』だった。

『母の彼氏』だからなに？
知らないよ。
彼はオレと寝たんだよ。
実の息子のこのオレに取られていい気味。

彼、言ってたでしょ？
「あのこには参った」って。
彼はオレの誘惑に負けたんだよ。

このオレの美貌は全部 母のせいだよ。
全部母の完成品(体)が犯した。
恨むなら母を恨めば良い。

それにしても都合いいよね。
オレが「彼が手を出した」と言えば彼は捕まるんだもの
全部オレの美貌のせいだよ。

狂った親からは
狂った子が生まれるんだよ
わかっているだろ？

傷も障害も何も無い
この美しく完璧なオレを作り出してくれた。
ピアノもバレエも歌も
全部オレの完璧を作り上げるためにさせてたんだろ？
それもこれも全部母のせいだよ。

だからオレはこの体と顔で金を得たんだよ。
存在しているだけで間抜けな男が紐を緩めて
オレに金をくれたんだよ。
その時は正直この受け継いだ体に
傷をつけているようで嬉しかったよ。
売春はオレにとっては自傷行為だった。

自分の気持ちに蓋をして生きてきたんだよ。
自分の恋心も自分の夢も全部封じ込められて。

オレはこれからも自分の顔と体を恨んで
生きていくんだ。

母さん、ありがとな。
こんなオレを作り上げてくれて。

これからもこの呪われた体で生きていくよ。

11/24/2025, 9:54:33 PM