チロ

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今日は比較的体調が良い。

「今日もいい天気だね〜」

「ほんとだな。こんな日は日なたでのんびり昼寝するんだよ」

「窓際、暑いでしょ〜」

「でも、気持ちいいよ。ふあぁー、ほんとに眠くなってきた…」

「寝ないでよ、私がつまらないじゃない」

白い壁に持たれて、ユウキは目を閉じた。欠伸もして、本当に眠る気のようだ。
私の前にある簡易テーブルには、トランプとユウキの伏せられたスマホ。

「来年はさあ…花を見に行こうよ。この時期はネモフィラ?がきれいなんだってさ」

「…結婚する前に、私が見たいって言ってたのに、結局行けなかったやつだよ」

「……そうだっけ、ごめん」

「今になって興味出たの?」

「…テレビで見て、きれいだったから…カヨと見たいなと思ったんだ」

壁から少し体を起こして、申し訳なさそうに私を見上げてくる。

「来年ね」

「うん、来年。カヨと行きたい」

声はだせず、私は頷いていた。
「私も、ユウキと生きたい」とはいえなかった。


少し前にガンが発見された。あれよこれよと、私は入院した。もうすでに、あちこちへ転移しているらしい。
色々検査された後、これから本格的な治療を始めていく。
どんどん変わっていく私を、ユウキは変わらずに愛してくれるだろうか。離婚した方が幸せなのでは?考えはしたけれど、結局ユウキのことを手放せなかったのは私だ。



やさしくしないで。生きたくなるから。

やさしくして欲しい。あなたに愛されたままがいい。



人の感情って、本当にわがままなものだと。
長いひとりの時間に私は思う。

2/3/2025, 10:54:25 PM