とうの

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鈴蘭と朝露

まだ空が霞んでいる早朝の岬に、ふたりの少年がいた。
「おいおい…仲間、だろ?ここまで一緒に来ただろ?お前と、俺と、皆で……何でそうなるんだよ!」
タウは声を荒げた。波が音を立てて、岬の崖を打つ。
「うん、仲間だよ。いや、正確には仲間だった、かな。ごめんね、僕は平穏を汚す人は嫌いなんだよ」
カイは微笑んで言った。冷たい空気を纏っている。
「何だよそれ、お前、俺らは同類だって───」
早朝だからか、タウは頭痛を微かに感じていた。
「えぇ? まったく、冗談はやめてくれよ」
カイは肩をすくめる。
「僕と君の共通点なんて、猫を被っていることくらいじゃあないか。僕は皆に何一つ危害を加えていない。知ってるかい? 集団主義の怖い部分は、異端の者を見つければすぐ排除しようとするところだ。でも皆は優しいからね、できない。だからこうして僕が代表して行うんだ」
カイの言葉を聞いて、タウは演技をやめた。
「あっそ。俺をここから突き落とそうって?力は俺の方が優位だ。お前、先にネタバレするんじゃなかったな」
「"先に"?あれは"解説"だよ、小説で言う"後書き"さ」
タウは訝しげにカイを見つめる。
「もっと解説が必要かい?まあ、最期だし教えてあげるよ。そうだなあ、君、この高原によく生えている、鈴蘭の毒性を知っている?」
カイは足元の鈴蘭をハンカチで包み、折って、見せる。
「……まさか、お前」
「やっと分かった? 良かった。もうすぐ効いてくるはずだよ、頭痛が酷くなってきただろう?」
葉に残っていた小さな露が、消え落ちた。


12月10日『仲間』

12/10/2022, 12:25:07 PM