夢見がちな眠り姫

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病室

この瞬間に慣れることはないだろう。

無表情な機械の画面に映る、真っ直ぐな線。人が亡くなったことを意味する、この線。実際にこの線を見たことがある人はどれくらいだろうか。ドラマなんかでは、奇跡的に最愛の人の死の瞬間に立ち会える。立ち会うのが幸か不幸かはべつとして、そんなに運がいい人がどれほどいようか。

どんな死因であれ、人に思われながら死ぬことは、美しい死だと僕は思う。医師がこんなことを言うのは不謹慎かもしれない。しかし、美しい死というのは、それだけ難しいことなのだ。
いつ死ぬか分からない。覚悟は出来ていても、心の準備は出来ていないかも。死と、美しい死と向き合うことは、勇気がいる。そう、運以前に僕らの心の問題でもあるのかもしれない。

だが、僕らは生にも死にも向き合わなければならない。生きるのが、死ぬのが当たり前になってたまるものか。

死の瞬間だけではない。生きている瞬間もだ。その瞬間に慣れることはないだろう。慣れてはいけないんだ。

8/2/2023, 1:27:44 PM