ストック

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Theme:永遠

「永遠の命か…」

古来より、権力者達は不老不死を望んでいたという。
しかし、彼らは永遠の代償まで考えが及んでいたのだろうか。

魔物の手に掛かり事切れた俺を、彼女はこの世に呼び戻してくれた。
自分の命と引き換えにして。

それから俺は、歳をとることもなくなった。浅い傷程度なら、すぐに自然に治癒してしまう。
理から外れた俺は、どうやら人間ではなくなってしまったらしい。

永遠を生きるのは孤独なものだった。
家族も、友も、仲間も。皆、俺を置いて先に逝ってしまう。
寿命で死ぬことのない俺を人々は畏怖し、絆を結ぶことさえできなくなった。

そして、何よりも、彼女のいないこの世界で俺が生き続ける意味はあるのだろうか。

永遠なんていらない。ただ、彼女と同じ理を歩みたかった。
でも、彼女が救ってくれた命を無下に捨てることもできなかった。

永遠を生きるものとして、俺には何ができるのだろう。
皮肉なことに、考える時間はいくらでもある。
当てもない旅を続けながら、俺は今日も永遠の意味を考え続ける。

11/1/2023, 3:02:27 PM