夜が更ける頃、街はいっそう明るくなる。それは明るくありながら何処か闇を抱えている。
薄暗い部屋の角、ベッドの上で重なり合う影。
「……ほんとに良いの?」
「うん……𓏸𓏸にして欲しい」
𓏸𓏸は震える手で××の細い手首を握る。そしてゆっくりと顔を近づけた。
街が更ける頃、街はいっそう明るくなる。明るさの裏には得体の知れない不気味さがある。
「××、一緒に」
「……ごめんなさい。逃げられないの」
××は𓏸𓏸の手を解く。ごめんなさい、と繰り返しながら××は明るい夜の街へ消えていった。
これで何人目だろう。誰も共に朝日を迎えてくれない。自分は悪くない、そう言い聞かせて新しい誰かを探しに闇へ消えた。
『街の明かり』
7/8/2024, 1:51:12 PM