三日月
速度を落として、ひねくれたカーブを下りていく。途中で視界に月が入ったが、すぐに運転に意識を戻した。
料金所を出て、左折した。信号待ちの列に加わる。知らない街だが、さして新鮮味もない風景だった。
家を出たときの母の表情を思い出した。違和感があった気がする。はっきりとは言えないが。そう思うと昨日の父の様子も、どこかよそよそしい様に思えてきた。だが、もし何かがあったとしても、今できることはない。
青に変わった。アクセルを踏む。
月は三日月だった。まだ全ては見えない。
1/9/2024, 10:36:35 PM