――人を呪わば穴二つ、まあ人ではないんだけど
なんと呼べばいいのだろうか。父、母、製作者、持ち主。どれも当てはまるのにどこか違和感がある。
彼はわたしを可愛がる。娘のように愛し、人形のように愛で、ペットのように世話をする。いやもっと適切なものがある、花だ。愛情をこめて育み愛でる対象だ。簡単に手放せる薄っぺらい愛情でもって繋がっている。それが見えない鎖であり、運命の糸というものでもあるのかもしれない。
彼が希望したからわたしはこの容姿をしている。
雪のように真っ白な肌、蕩けだしそうな蜂蜜色の瞳、絹糸のような白銀の髪、高すぎず低すぎない身長と細身だが女性らしい丸みのある身体のライン。それがわたし。
彼の理想がわたしを創った。構想も制作も全て彼一人で行った。才能と努力の証である。
「…俺が死ぬまでは、壊れないでくれよ」
小さな呟き。今にも泣き出しそうなか細い声が弱々しく懇願する。誰に聞かせるでもない言葉、だって彼はわたしに気づいていない。
わたしには彼の願いを叶えられるほどの力はない。でも彼が望むのならその言葉通りでありたい。『のろい』も『まじない』も同じ『呪い』だ。あやふやなわたしに器を与え、わたしを望んだのだから、叶えなくては。
愛しい、愛しい、わたしだけのあなたのために
何があなたをそんなに苦しめるのか教えてね
きっとわたしが助けてみせる
――約束よ、あなた
【題:フラワー】
4/7/2025, 3:10:55 PM