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 紋白蝶、ですか。
 特段貴女と俺の間に、それにまつわる思い出があるわけでも無し、今日は言葉を紡ぎづらいですね。

 俺が貴女といられたのはたったの四日、それも貴女を本当に愛することができたのは、ただの一晩とその明くる朝だけでした。
 俺は貴女との時間を、もっともっと重ねたかった。俺がもっと早くに貴女の愛に気づいていたら、貴女は俺を旅に出さず、お傍に置いてくださっていたでしょうか。あの時のことを思い出すと、今でも胸がじくじくと痛みます。

 今の貴女を見守れることで、俺は満足していますよ。それでもごく稀に、ふと思ってしまうのです。

 春の草原を舞う紋白蝶を追い、夏の心地よく冷たいせせらぎで水浴びをし、秋の高い空を仰ぎながら畑仕事をし、冬のしじまに庵の炉端で静かに語らう。
 貴女と共に生き、そんな四季を過ごしてみたかった、と。

5/10/2024, 1:04:56 PM