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今流行りのダンス動画。自分史上いちばん良い出来だったと自負するくらいには満足のいくものになった。
「あ、こんな時間。もう行かなきゃ」
今日は友達と遊びに行く予定だった。
マンションのエレベーターに乗って、地上に降り立つ。
刺すような日差しに目を細め、日傘を取り出した。
「わー久しぶり、元気だった?」
「久しぶり!元気、元気。そっちは最近どう」
近況を話しあいながら、私たちは人ごみにのまれていった。
よく冷えたアイスコーヒーとクリームソーダ。私たちのテーブルに並んだふたつのコップは汗をかくように、水滴をつくっている。
「そういえばさ見たよ。ダンス、すごいね」
「えーありがとう。たいしたことないんだけどね」
目の前のクリームソーダに口をつける。甘くておいしい。
服を見に行くために席を立つ。
駅の近くの繁華街には人が集まっていた。
なんだろうと背伸びすると、中心にはひとつの絵画ができていた。
「路上パフォーマンスってやつかな」
色とりどりの線が躍動し、縁取られていく。魔法みたいだった。
私はスマホを取り出す。
息苦しくなるくらいのはやさで、帰路に立つ。
私の動画再生数は1000回もいかない。だけどあの絵画パフォーマンスはもう2万回再生もいっている。そして、くらべものにならないほどのいいね数。
私のダンスはだれかのコピーでしかなくて。
でもあの絵画はきっとオリジナルなのだ。
悔しかった。私はだれかに認めてほしい。だれよりも優れていたい。
だれかの真似をすることでしか得られない優越感なんて、いらない。
7/14/2024, 1:08:17 AM