お題:伝えたい
文字で伝えることは思ったより難しい。
「そこまで考えてなかったんだけどな」
自室でスマホを見た私はつぶやく。そこにはつい先ほど受信したメッセージが映っていた。名前も顔も知らない誰かが、私の書いたものに対して送ってくれた感想だ。
私は趣味でたまに小説を書いている。五分もあれば読めてしまう程度のお手軽な掌編小説。意外と読んでくれる人がいて、まれに匿名メッセージで感想をもらったりもする。
その感想が問題だった。私の意図していたものよりも、壮大なものを感じ取ってしまった読み手がいるらしい。話を書いた私より、そこまで読み取れるあなたのほうが素晴らしいですよ、と言いたくなる。
小説とは、なにを伝えたいかというテーマが大事とよく言われる。でも正直私はそこまで意識していない。趣味で書いてるんだから面白く書けたらいいな、なんて思ってる程度だ。それにテーマを決めたところで読者にちゃんと伝わるとは限らない。書き手ができることは文字を書き連ねて発表するところまでであって、それをどう受け取るかは読者に委ねられている。
伝えるというのは相手がいてはじめて成立することだ。
「とりあえずメッセージ返さないと」
ただ、自分の書いたもので誰かが楽しんでくれるのはとても嬉しい。この気持ちは間違いなく本物だから、それをこの画面の向こうの相手に伝えたい。
「ありがとうございます。嬉しいです……っと」
ボタンをタップして、感謝の気持ちを込めたメッセージを送る。
この気持ちがきちんと届きますように。そう願いながらスマホを見つめた。
2/12/2026, 11:35:35 PM