「ん、ああ、すまない。」
ああこの馬鹿。またやってしまった。
呆れたような、諦めたような彼の目が
愚か者の心臓をしめつけた。
「いや、いいよ。たいした話じゃないし。」
「もう一度話してくれないか。」
「え、ああ、もう忘れちゃった。」
もう寝るよ。おやすみ。
その手は優しかった。
昨日の彼、今日の彼。1分前の彼。
もう二度と会えない彼。
こうして私の知らない彼が増えていく。
それなのに私ときたら嗚呼。
本なんていつでも読めるじゃないか。
今すぐベッドまで追いかけて
すがりついてみっともなく泣いてみせれば
こんな私を可愛いと言ってくれるだろうか。
それともついに嫌われてしまうだろうか。
嗚呼この意気地なし。
嗚呼
3/9/2025, 4:06:46 PM