レイザービーム

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買い物の帰り途中、茜色の海辺で一人の少女が右往左往していた。
「お嬢さん、なにか探しものですか?」
声に気付き少女は少し悩んでから首を横に振る。
「では失礼ですが一体なにを……?」
ポケットから小さな瓶を取り出してぽつりぽつりと話し始める。
「星のかけら…お母さんに……喜んで…ほしくて…。」
小さな瓶の中には数えられるほどの量のきらきらと光る星の砂が入っていた。
お土産売り場に行けば星の砂を買うことはできる。しかし、少女にとってそれはダメなのだろう。
思い詰めた表情にどこか心を痛める。
「わかりました。私にも手伝わせてください。ただ、本日はもうすぐ日が沈みきってしまいますから…明日また再開しませんか?」
小さく頷く少女。ぱたぱたと病院の方へと駆けていく姿を見送る──。

翌日、また茜色の海辺に寄る。昨日とは違い、少しずつ暖かい日差しを感じる。辺りを見渡すと少女は体育座りをして俯いていた。
「お嬢さんお待たせしました。昨日ぶりですね。」
ゆっくりと顔を上げる少女。少女はきらきらと光に反射する大粒の星を流していた。
「あのね……お母さん…いなく…なっちゃった。」
鼻を啜りながら伝えられた言葉を耳が拒絶しようとする。
ああ、間に合わなかったのか。昨日でなければなかったのか。不甲斐なさと申し訳なさが込み上げてくる。少女になんて声をかけたら良いのだろうか。
つられて私も小粒の星を流す。少女は小さな瓶を眺めながら口をあける。
「これ…その……お母さんがよく…お星様のお話してくれたの。お母さん…いつかたくさんお星様に触れてみたいって…。いなくなっちゃう前に叶えてあげたかったの。」
お母さんとの会話を思い出したのか柔らかくはにかむ少女。
「…大丈夫です。きっとあなたの集めてくれたお星様のかけらでお母様は星がたくさんあるところへ安全に行けたのです。なにより、笑ったあなたの笑顔はお星様のようにきらきらとしていて…お母様は幸せだったと思います。」
「うん……そうだといいな。昨日今日と…ありがとう。将来は…宇宙飛行士になって…お母さんに会いに行く。」
涙を拭いて笑う少女に胸打たれる。
どうかこの先少女に幸せが訪れますように。
非力ながらそう星へ願いを込めてその場を離れたのだった。

:星のかけら

1/10/2025, 4:54:00 AM