目を開けると天井だった。ここどこだ?なんか頭がじーんとする。しかもなんか嗅いだことある匂いもするし。
「良かったああ!」
「ぐえ」
いきなりの叫び声と同時に力が加わる。いつもの、幼なじみが思いっきり抱きついてきた。わりと強い。つーか、首が締まって、
「ぐ、るじ……」
「タケちゃん?ねぇ、大丈夫?しっかりしてっ」
離れたと思ったら今度はオレの頭をバシバシ叩きやがった。コイツはオレを殺す気か。
「大丈夫?どっか痛む?」
「……あぁ、大丈夫」
本当は叩かれまくったから頭が痛いけど言葉を呑み込んだ。半べそかいてオレの顔を覗き込んでるコイツを見たら言う気がなくなった。
「タケちゃん覚えてる?なんでここにいるのか分かる?」
「いや、あんまよく覚えてねーんだわ」
ようやく落ち着いて周りを見たらオレは保健室のベッドの上だった。
「ほんとに?覚えてないの?階段4段飛ばしでかっこつけて降りたら最後の最後に踏み外して転んだ上に受け身を取ろうとしたけどそれが失敗して顔面からいったんだよ」
「あ、そう……」
だっさ。目撃者があんまり居なかったことを願う。どうりで腕とかデコが痛いわけだ。よくよく見ると頬や指には絆創膏が貼られていた。
「つーかお前、さっきまで呼んでた?」
「え、呼んでないよ。タケちゃんさっきまで寝てたんだから。でもずっとここにいたよ」
「そーなんか」
「どしたの?……やっぱり、頭の打ち所悪い?」
「いや、そんなんじゃねーよ。でもずっとお前がオレを呼びまくってた気がしたんだよ。それで目が覚めたようなもんだからな」
「……もしかして、渡る寸前だったのかも」
「何を?」
「川」
「は?」
「だから、三途の川を渡るとこだったんだよタケちゃん。それで、私の声が聞こえた気がして引き返してきたんだよ!」
「おいおい……オレを殺そうとするなよ」
「だから死んでないでしょ。無事に戻ってこられたってこと。はぁー、良かった」
と言って、オレの目の前で胸を撫で下ろす。確かに聞こえた気がしたんだけどな。けど、万にひとつそうだったとしたら、オレはコイツに助けられたってことになるな。コイツのお陰で命拾いしたってことだ。
「タケちゃん?なに?まだどっか変なの?ここは保健室だよ。無事なんだよ、私の言ってることわかる?」
「分かるよ、へーき。サンキュ」
「……」
「なんだよ」
「なんか、タケちゃんがお礼言うとか珍しい。やっぱり頭のお医者さん行っとこうか」
「なんでだよっ」
そこは素直に喜べよな。本当に感謝してるんだからよ。
9/23/2023, 8:12:21 AM