腰の痛みで整形外科を受診した。レントゲンの結果、異常はなく、痛み止めで様子観察となり、ロキソプロフェンとレバミピドが処方された。
いわずと知れた、鎮痛薬と胃薬である。
ドラッグストアの処方箋取扱窓口で薬剤師さんは薬の説明を簡単に行ってくれて、私は質問ないですよ、とにこやかに返事をする。
半年前にも腰痛で同じ薬局で同じ薬が同じ飲み方で手渡された。たった2種類、難しい薬ではないし。患者の私の対応も薬剤師の対応もきっと普通なのだろう。
いざ、食後に内服薬を薬袋から取り出して、アレ、と無意識のうちに声が出た。
ロキソプロフェン、錠剤は淡いピンク色で見知った色だが、シルバーのシートに書かれた文字はインディゴブルーだった。
私の知っているロキソプロフェンは、シルバーのシートに文字はグリーンだったはず。
「フォントまで違うじゃん」フォントの大きさも文字のカタチ自体も違う。
「おしゃれになっちゃって。たった半年で」
「ってコトを、今日のお題を見たら思い出したんだよね」
夕食を食べながら、書く習慣アプリの存在を教えてくれた娘に伝える。
娘はふーん、と言いながらケチャップで味付けしたチキンを頬張っている。
「でもそれだと、レッドがないじゃん」
「ロキソ、レッドじゃダメ?」
「ピンクでしょ」
「じゃあレバミピドは?」
娘はテーブルの上に置かれたシートをチラッと見た。
「それもピンク」
「うーん、でもピンクって言ってもまあまあ濃い文字じゃん?レッドってことにしよ」
「好きにしたら?ごちそうさま」
娘の声は冷たい。まあ慣れっこだけれども。
呆れたように娘は立ち去り、私はレバミピドのシートをもう一度見る。
「レッドでいいでしょ」
Red, Green, Blue
お題の第一印象は、戦隊ヒーローみたい。YellowとPinkが足りないけど。
錠剤2錠を取り出して口の中に放り込む。
戦隊ヒーローみたく、悪を取り除いてくれますように。
リビングのソファでくつろぐ娘に声をかける。
「こんな感じ、どう?」
「ダサっ」
おまけ
「ねぇお母さん」
「ん?」
「ロキソプロフェンのシートの裏側、見た?ピンクの文字だよ」
「え!?」
シートをひっくり返すと、確かにピンクの文字。それもレバミピドよりも濃い文字色。ピンクよりもはやレッドに近い。
「完結したね」
「うん…」
あのやりとりは何だったのか、と思う幕切れ。
「腰痛は?」
「ロキソプロフェン効いてるよ」
「良かったね」
「うん」
戦隊ヒーローのリーダーはレッドって昔から相場が決まってる。
「やっぱりレッドがヒーローだ。ロキソプロフェンが影のヒーローで間違いなかった」
「はいはい」
娘はまだ言ってるよ、と呆れたような視線を寄越した。
Red, Green, Blue
9/10/2025, 3:17:58 PM