憧れときらめきが糧となっていたときのことを思い出してみよう。別の喜びを知る由もなかったあの頃を。生きるために必要だった自身を欺くこと。鈍化して、盲信していくこと。視線のやりとりに痺れていた頃の感覚。うっとりと音に身を任せて川沿いを歩く日々。何も始まらない私にも3月の生ぬるい風が吹き、同じ歌を聴いて、あの子は私だった。聡明なあの子に認めてほしかった。何も持ち合わせない私。何もない。思想も教養も常識も。欲だけ。
書いてあることしか読めなくなって、世界は現実に名前を変えて。生きていく術は身につけど、生きていけない。生きていけない。
2/11/2025, 1:41:20 PM