沢山の人達が歩いている駅構内。
「またどこか会うかもな。じゃあな」
「うん、またね」
彼氏が、私に背を向けて離れていく。
私は、離れていく彼氏を追いかける。
彼氏は私に気づいたのか、立ち止まって振り向いた。
「あのさ、今、俺達の恋人関係は終わって別れの挨拶したよな?」
「う、うん……」
「分かってるならよし。じゃあな」
彼氏は再び歩き出し、私から離れていく。
私は、再び離れていく彼氏を追いかける。
しばらくすると、彼氏は立ち止まって振り向いた。
「だ・か・ら!別れただろ俺達!もう恋人じゃないんだ。付いてくるなよ!」
「だって……私……やっぱり別れたくないよ……」
彼氏の冷たい言葉を聞いて、胸が痛くなり、今にも涙が出そうだ。
でも、彼氏は冷たい言葉を続ける。
「そんなこと言われても、ちゃんと話し合って決めただろ?別れるって」
「そうだけど……やっぱり……」
「寄りを戻そうとか思ってないから、俺。もう付いてくるなよ」
「あっ……」
彼氏は早足で歩いていき、人混みの中へ消えていった。
……ま、いっか。
鞄からスマホを取り出し、GPSアプリを起動する。
赤い丸が、駅から出て商店街へ向かって動いていた。
彼氏のスマホ内部に、GPSを取り付けてある。
これで、彼氏がどこにいるのか、どこへ行こうとしているのか、丸分かりなのだ。
「ふふ……またねっ」
彼氏の現在地を見て、胸が温かくなった。
8/6/2025, 10:21:03 PM