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7/9 (日)「街の灯」
あの子は今何をしているのだろう。
何の前触れもなくこの町を去っていったあの子は。

夜になって町の街灯なんて言えない様なみすぼらしい灯を背にする度に、思い出す。
あの子の眩しい笑顔を。
あの子のそよ風の様な笑い声を。
最後に見た悲しみに満ちた表情を。

あんな別れ方をしてしまった私を、あの子はゆるしてはくれるだろうか。せめて、会って一言謝りたい、出来ることなら、また、昔の様に笑い合いたい。そう願ってしまうのは我儘だろうか。

私はこれから先、街灯を見る度にあの子を思い出し、心の中で自分を責めたて続けるのだろう。それが私があの子に出来るたった一つのの贖罪なのだから。

「―――」
あの子の名前を小さく口に出すも、その声はちょうど通りかかったトラックに虚しくもかき消されてしまった。

7/9/2023, 3:43:44 AM