300字小説
さようなら
虹の橋を渡る前にもう一度、逢いたい人に逢っておいで。そう神様に言われて、大好きな君に逢いに行く。
君と歩いた散歩道。君とボールで遊んだ公園をすり抜けて。
ボクが見た君の最後の顔は泣き顔だった。小さい頃から泣き虫で、何かあるとボクの毛並みに顔を埋めていた君。今、君はどうしてる?
塀の隙間から覗く。
「キャン!」
庭に真っ白でふわふわの子犬がいる。その子犬に笑いながら、ボクのボールを君が投げていた。
……そっか、ボクがいなくなって、その子が代わりに来たのか。
笑顔の君。もう泣いてない。本当に良かった。
子犬が振り向く。ボクの代わりに君を頼むよ。
「キャン!」
答えるキミに背を向ける。さようなら。ボクは街を駆け抜けた。
お題「大好きな君に」
3/4/2024, 12:21:43 PM