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回送電車を見送ること三回。時針は二歩ほど足を進めている。忘れ物を取りに戻った彼女はどこへ行ったのやら。先程お茶をしていたカフェは駅の改札前にあり、往復したとて十分もかからないはずだ。ううん、どうしたものか。一人で取りに行ける!と自信満々だった彼女が今頃しょぼくれている姿が容易に想像できる。
「待ってて」
そう云った彼女の言葉を律儀に守っていたら日が暮れてしまう。何なら一日が終わる。迎えに行くか。はあ、とため息を吐いて立ち上がる。ニ時間も座っていたから尻が痛い。

2/13/2024, 3:17:06 PM