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人と人とが関わる時は何かしら名称が付く。家族とか友達とか知り合いとか恋人とか。近くから遠くまで。他人、まであるくらいだ。

「じゃああなたとわたしの関係は?」

わたしの前で彼女がえくぼを作って微笑む。波打ち際の潮風が肌を撫で、黒髪のロングヘアを攫っていった。

「さぁ、名前なんているかな」
「今絶対あるって言ったのに」
「ある、と必要かどうかは変わるよ」

そうね、そう言って彼女は一歩前に出た。足に砂が着くのも気にせず、一歩、また一歩と歩いていく。

「もういくの」
「…いくよ」

ぱしゃりと小さく音を立てて彼女は海に消えていった。潮騒が残る。手に残った貝殻をひとつにぎりしめて、私は夕日を眺めていた。

11/7/2023, 10:21:03 AM