『微熱』
あいつのことでやけ酒を飲む君を慰めるのは、何度目だろう。
始めのうちは居酒屋で、盛大に文句を言って潰れる君を、あいつに引き渡していたけれど。
回を重ねるごとに場所を変え、今ではこの静かなBARで、言葉もなく涙をこぼす君を、あいつに知らせることはしない。
もう、いいんじゃないかな。
君は、十分頑張った。
そして、その分傷ついた。
グラスを握りしめる君の手に、初めて触れる。
冷たい指先とは裏腹に、見返す君の瞳には、以前はなかった仄かな熱が籠められている。
このまま熱に浮かされてしまえばいい。
そして僕を選べばいい。
君の唇が微かに震え、僕の手を握り返してくれた、その時。
カランとドアベルが鳴って、誰かが近づいてくる気配がした。
11/27/2024, 3:24:45 AM