「このまま野球を続けたってどうしようも無いんだ。もう行き止まりで、これは僕をどこにも運んでくれないと思ってしまう」
「君は野球を続けてもどこにも行けないと考えている」
「そうだ」
「それは袋小路で、どこにも運んでくれないと」
男は見えない時間の砂を握りしめるように、右手を握ったり緩めたりしながら言った。
「でもね、君をどこかまともな場所に連れていってくれるものなんて限りなく無いと思うよ。いいかい、人生って言うのは自分で乗り物を選んで、行き先を決めるって風には出来ないんだ。そこには必ず不条理があって、不公平がある。1度乗ったのなら、身を任せればいい。そんなに難しく考える必要は無いさ」
「そういうものかな」
「大体においてはね」
5/11/2025, 3:56:51 PM