僕は、ヒトは人の心を殺して生きていくものなんだと
本気で思っていた。
壊して、壊して、撃ち抜いて
殺して、殺して、引き裂いて
そうして出来上がったものが
人の心なんだと、本気で思っていたんだ。
人の心の叫びは大きくて、いつでもか細いから
それに敏感で、臆病な自分は
いつでも人を、守ることでしか
助けられないものだと本気で思っていたんだ。
その時、僕にしか愛せない人とであった。
僕を愛してくれる人だった。
手を繋いだ。並んで歩いた。一緒に夢を、未来を語った。
その人が、好きだった。大好きだった。
そうしたら気が付いたんだ。
人の心を殺しながら生きていた僕は
無意識に、心を壊す銃を両腕に構えていた。
紛れもない、今度は他でもないキミに照準を向けて。
その銃に気が付いた時に吐いた
言葉が、ひっくり返るようにキミを傷つけた。
ーーー僕は、壊すのか。いまから、これから。
ーーー誰よりも大切なキミまでもを。
ーーー他に生き方は知らない。一体どうしたらいい。
2023/05/11/Thu〈愛を叫ぶ〉
人を初めて愛しました。
いびつな生き方しか出来なかった、自分にすら気が付けなかった僕が、初めて誰かを愛しました。
眉間にまで突きつけられた僕の銃は、やっぱり
ーーー引き金は、引けなかったよ。
優しい、って正直難しいよな。
正しい、って本物なんか、どこにもないよな。
「ごめん」、「ごめんなさい」、「ごめんね」、「ごめん」
あの時に、流した涙が声が、言葉が、感情が
「紛れもない、愛の形」だったんだ。
僕は叫んだ。無償の愛を。僕自身の心がその声を、覚えてくれるまで。
キミは、なにも言わずに「うん、そっか、大丈夫」って、僕の肩撫でて隣にいてくれたね。
いつかなんて関係ない、いまキミが好き。
それだけで、「生き方」なんか、必要なかったんだ。
先への絶対感や、昨日までのやるせなさも
自分次第で変わっていける、って気が付けたんだ。
もうひとつだけ、言えることがあるのなら
人の心は、殺すことじゃない、「生きる」ことで強くなって
そうして自分を見つけて自分自身で幸せになるんだ、ってその時、知って気が付いたんだ。
手の平に構えた銃は、もう消えて見えなかった。
5/11/2023, 12:03:41 PM