8月31日、午後5時
君は今年も無事、9月1日を迎えただろうか。
僕はまだ、8月31日の午後5時にいる。時計は進んでも僕の中に空白時間として抱え込んでしまった。僕はあの時の君の声を反芻している──もう来なくていいよ。
たいして意味のない言葉だったのに、ナイフそのものだった。どんな言葉で返すのが正解だったのか、僕はいまだに考えている。あの時感じた複雑な感情の中で、最も僕を捉えて今も離さないのは、屈辱、悲しみ、焦り、怒り、哀願のどれだろうか。考えてはみるが結局、いつも結論は出ない。
正直、君の顔はもう思い出せない。なのに、あの時の表情だけは鮮明だ。
君はあまりにも無表情だった。人間ではないみたいに。
皮肉にもあの無関心さが、僕を執着させているのかもしれない。もう顔も覚えていない君の無表情が、今も深くナイフを刺し込んで僕を8月31日、午後5時に繋ぎ止めている。
9/1/2025, 12:52:28 AM