No.25『やり直し』
散文 / 掌編小説
クリスマスイルミネーションが撤去された、寂しい街中をひとり歩く。クリスマスイブにされたプロポーズを断ったわたしは、酷く後悔していた。
『君を幸せにするよ』
そう言った彼の言葉が信じられなくて。そこで『二人で幸せになろう』と言われたのなら、わたしの努力でなんとかなるからOKしたかも知れない。
だけど、子どもの頃に、母親に浮気されて捨てられた父親から言われた『変わらないものはない』という酷い言葉が、まるで呪文のようにわたしの心を縛りつけていて、咄嗟にごめんなさいと口にしてしまった。後悔するも後の祭りだ。
「あ……」
その時、プロポーズを断って以来、連絡がなかった彼からメッセージが届いた。今夜会えるかな、と一言だけのメッセージに、なんと返そうか悩む。いいよだとか大丈夫だけだと素っ気なさすぎるし、連絡をくれて嬉しいだと図々しすぎる気がして。返事に悩んでいると、続けて『いつかやり直させてもらっていい?』とメッセージが入る。
このやり直しがプロポーズのことだとしたら、わたしはまだ、彼の恋人でいさせてくれているのだろうか。わたしは付き合い始めた頃から変わらず、彼の恋人でいたい。
お題:変わらないものはない
12/27/2022, 8:13:15 AM