「はい」
2月14日。渡されたのは、塩の瓶だった。少し高級そうなやつ。
「塩?」
「塩」
問いかけた言葉には断定的な同じ言葉が返ってくる。
「なんで塩?」
今日はバレンタイン。
好きな子からはもちろんチョコレートを貰いたいお年頃。
素直に尋ねれば、彼女はきょとんとして答えた。
「なんでって、甘いものキライって言ってたし。しょっぱいものがいいなら、いっそこれかなって」
何を不思議そうな顔をしているんだろう。
不思議な顔をしたいのはこちらなのだが。
まさか自身のモテが裏目に出るとは。
少し高級そうなのがさらに泣けた。
2/14『バレンタイン』
君の瞳に吸い込まれた時から、僕は君に夢中だった。
でも、身分違いの恋。それはわかってた。
だから僕は懸命に努力した。君に見合うように。
勉強、武術に田畑や樹木の自然のことまで。
馬車の窓から見える景色がだんだんとのどかになっていく。
僕の靴は、君の家の前に降り立った時、泥で汚れてしまうだろう。大臣に怒られるな。
それでも僕は構わない。君を迎えに行けるのなら。
咳払いをして、君の家の扉の前に立った。
「もしもし」
扉の奥に声をかける。
鈴の鳴るような返事とパタパタと走る音が聞こえる。
待ってて。今から君をとびきり幸せなお姫様にするから。
2/13『待ってて』
2/15/2026, 2:55:45 AM