「まさしくカラスの濡れ羽色だね」
ベンチの隣に座る兄さんがふと呟いた。
雨の匂いが充満し雨水の音がせせらぎ湿気が肌に取り巻く。バケツをひっくり返したような豪雨の中、近くの東屋へ指さして、今はそこで雨を凌いでいる。
雨は全くもって止む気配がない。
僕は靴を履き捨て靴下を脱いでから
やっと兄さんの視線を手繰った。
そこにはカラスが1羽、飛びもせず羽を気にしながら歩いていた。
緑や青、紫が混じり合った深みのある羽色が艶やかで僕にはひどく上品で美しく感じた。
「聡明なカラスにピッタリできわやかな羽色だね」
兄さんは大人っぽく、優しく笑った。
10/26/2025, 6:10:50 AM