創作物語
「紀久代、私の愛する女性はお前だけだ。」
その日は秋晴れ。形の良い鱗が空に広がっていた。しかしながら、秋らしく肌寒い風が吹き散るもので、薬木は外に出ることを酷く嫌悪していた。
「先生ー!外に出ましょうよー!今日は散歩日和ですよ!」
紀久代の声が張り上げるたびに「うるさいー」と布団を頭まで被った。寒い日は布団に入ってずっと永眠していたいと言うものが薬木の本音であり本性だった。紀久代にはその本音を恥じることなく見せつけている。
「なぜなら、紀久代だけには己の素を出せる、という熱い信頼があったからだ。それから…」
「ちょっとストップ。」
「はい、なんですか?先生。」
「…私はそんなこと言わないぞ。」
紀久代はそれまでのつらつらと書き連ねた文章が載った巻物を畳の上に置いた。「えー」とあからさまに不服そうな顔をしている。
「でも先生。こう言う創作物語も勉強の一部なんですよ。」
「んなわけあるか!!」
ガツンと紀久代の頭を打った。
10/6/2025, 3:59:13 PM