『ごめんごめん! いま電車乗ったからさ、もうちょっと待ってて!』
目にもとまらぬ速さでスマホを操作して、久しぶりに会う友達の沙綾にメッセージを送る。待ち合わせ時間は11時だったのに、スマホが示すのは、とっくにレストランが家族連れで賑わっているであろう時間だ。
電車の座席に腰を落ち着けてスマホを見ていると、沙綾から返信があった。
『チカ、私、決心がついた』
決心。一体なんのことだろう。
なに、どうした?──と打とうとしたところで、沙綾から連続でメッセージが送られてきた。
『ごめん』
『勝手に賭けてたの、チカに』
『今日、約束通りチカに会えたら思いとどまろうって』
『もし、いつも通り遅刻してくるなら、その程度の縁だったと思おうって』
『チカに会いたかったから』
『ごめん。もう来なくて大丈夫だよ。じゃあね』
その日から、私は遅刻が恐ろしくなった。世界で一番、恐ろしくなった。
私は今でも、遅刻した私を恨み続けている。
2/14/2024, 2:38:26 AM