古井戸の底

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愛寧は水溜まりを避けきれず、右足を思い切り突っ込んでしまった。歩く度に靴下から水が滲み出て、爪先を冷やして行く。
数歩先を歩いていた空閑が振り返る。
「どうした?」
「水入った」
足取りが重くなった愛寧に合わせ、空閑はゆっくり歩いてくれた。
「なんでそんなむくれてんの」
「……足が、気持ち悪いから」
愛寧は嘘をついた。本当は、彼の前で失敗してしまったことが悔しかった。

【雨と君】

9/7/2025, 1:55:13 PM