蘇芳

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「はなればなれーの♪」
…などと、冗談めかして鼻歌を口ずさみつつ、真ん中あたりでぱっくりと背から外れてしまった文庫本の惨状を確認する。
本の修理は図書館ボランティアの仕事のひとつだ。
最近は無線綴じの本ばかりで、本そのものが壊れやすいというのもあるが、あまりに力強くページを開くと、そこからばっきり本が骨折してしまったかのように割れてしまったりする。
それを自分の本でやるなら良いが、図書館の本にそんな無体を働くのは誠にいただけない。次の借り手のことをまるで考えていない。
そもそも自分の本ではないのに、何故雨に濡らしたり、書き込みをしたり、ページを折ったり破ったり、挙句の果てには欲しいところを切り取ったりするのか。
そんなことをしでかす人との常識は、自分とは全く乖離したところにあり、理解不能であるし、理解したくもない。
とりあえず、目の前のこの文庫に関しては修理用の糊で上手にくっつけてしまえば、本棚に復帰できそうだ。

【お題:はなればなれ】

11/16/2024, 3:33:21 PM