練習

Open App

 今日の部室は賑やかだ。二年生三人が依頼人用のソファに座り、机を囲んでスマホゲームをしている。何でも昨日始まったイベントのクエストをやっているのだとか。まあこいつらが騒がしいのはいつも通りだ。彼らを横目で見つつ、渚紗は部室の奥にいる尼子の席へと向かう。
 珍しく三年生も多い。普段は兼部している技術部の活動に行っている小埜上がいる。
「昨日面白いことがあったんだって?」
「なんで知ってんだ」
「俺が話した」と、小埜上と同じクラスの尼子が言う。昼休みにでも喋ったのだろう。小埜上はその時のことを思い返すように目を瞑り、
「ゴミ漁りの犯人は、実はゴミを漁っていたんじゃなくて、壊した部室の備品をこっそり捨てようとしていた。でもその壊した備品というのが、実は他の部員が仕掛けたドッキリで、元々壊れてたやつを本物とすり替えた偽物だった……」
「バカバカしい」渚紗はため息をついた。「何がドッキリだ」
「私は好きだけどなー」と言う小埜上は、自分が興味があることならすぐ首を突っ込むタイプだ。
「今回に関しては仕掛ける相手がよくなかったかもね」と尼子。「まあ、当人達の間でもう和解はしてるみたいだから、いいんじゃない? ーーそうだ、今度渚紗にもやってあげようか」
「投げ飛ばすぞ」渚紗は尼子を睨んだが、そんなものは意に介さず、
「私も協力しよっか」
「お、頼もしいね」と、小埜上と盛り上がっている。
「ガキか」
「遊び心」と尼子は言い換えた。
 普段は周りの高校生より、一歩も二歩も大人びた立ち振る舞いをするのに、こういうことになると妙にはしゃぎ出すのは何なのだろう。
 こいつらも高校生なんだな、と同い年にも関わらず渚紗はしみじみ思うのだった。

#バカみたい


桜木渚紗(さくらぎなぎさ)
 ……高校3年生。口が悪く見た目はヤンキー。何事も達観しており無気力だが、自分がやりたいことが特にないため、人から頼まれると断れないタイプ。

尼子伶俐(あまごれいり)
 ……高校3年生。探偵団の団長。常に笑顔を崩さない食えないやつ。常識人に見えてやることは結構変わっている。渚紗とはちょっとした因縁がある。

小埜上因(おのうえゆかり)
 ……高校3年生。プログラミングなどコンピュータに関することが得意だが、反面PC中毒らしい。人間関係のこじれた話が大好物。


3/22/2024, 11:40:19 AM