灰の中のきつね

Open App

「優しくしないで」

ぼくは猫、捨て猫です。一昨日の大嵐の日、すてられました。このダンボールはまだ濡れていてさむいです。この道を通る大人の人はみんな朝も夜も忙しそうに走っていきます。
ぼくは救ってほしかった。たすけてほしかった。さむくて、おなかもすいてる、さびしい。でも、助けてくれるひとはいないの。
このダンボールから出ようとおもっても、そとは怖いから、なかなかでる覚悟ができないの。
それにぼくはなんですてられたか、今でもわからないんです。うるさくしたおぼえもないし、つめとぎをおうちの壁でやった訳でもない。なのにぼくはすてられちゃった。
そういえば、きょうも、雨だ。
そらからつめたい水がふってきて、ぼくの体をぬらしていじめる。

あといちにちもつかもたないかのぼくの「いのち」
ひえた体を震わせてまた寝ようと思った

「___」人の声が聞こえる。でも何を言ってるかは分からない。「_、__!!」「___」こどもとそのこどものおかあさんがぼくに傘をさしだしながらなにかをはなしていた。

ぼくはだっこされた。
あたたかい。このこどものうでのなかはとてもあたたかい。雨の日なのに。
「これからは、わたしと!いっしょだよ!」そう言われた。この言葉は分かった、理解出来た。

ぼくはうれしくて、うれしくて、しかたなかった。
でも、まえのかいぬしを思い出すととても怖くなるの
優しくしないで、また好きになって裏切られるのが怖いから。



ぼくは猫、飼い猫になるのは2回目です
でもぼくはいま、すごく、しあわせです

5/2/2024, 10:15:17 AM