荒廃した星を歩いた
たったひとりきりの影が後ろを着いてまわった
コンクリートなんてものはなく 土にまみれ 草花に侵食された床に座り込んだ
大きな穴が空いた天井を見上げて そこから覗いてくる三日月に笑いかけた
地球全体を巻き込む大規模な戦争 多くの人が死んだ 核爆弾が破裂した 毒ガスで人が死んだ 一般人も兵も 何もかもが死んだ
爆風で人が死に 熱さで人が死に 高威力の爆発で人が死に 汚染された空気で死に
人が起こした戦争 同じ種族のみでは足りないらしい 地球という生命は 徐々に徐々に腐っていった
生存者がいた 生きていける場所を求め 散り散りになった
それでも
僕の隣には君がいた 君の隣には僕が居た それだけで良かった
世界が滅びようと この星がもうすぐで消えてしまうのだとしても それで良かった
僕が帰った時君は死んでいた 血を吐いて 全身を狂ったように掻きむしって 死んでいた
君の持ち物をひとしきり握りしめて 僕の上着を君に着せて目を閉じさせた ぽつりと君を濡らした雨は やがて土に触れた
荒廃した星を歩いた
たったひとつの影と一緒に旅した
行くあても 生きる理由も見つからず ただひたすらに旅をした
生存者を求めているわけじゃない この戦争を恨んでいるわけじゃない 君のことを後追いしたいわけじゃない
ただ 強いて言うなら この永遠にも感じられる時間を 歩いてみたかっただけだ
たった一年で四十六億年の歴史は死んだ
たった一日で十七年の命が消えた
すぐにうつり変わってしまう世界を生きて 生きて 生きているうちに 時間とやらと友達になれたらしい
君がいなくなった世界を 君が隣にいない世界を
ただひたすらに歩いた 歩き回った
何万年の歳月がたっても 君を忘れることなんてありえない
それとは別に 迎えに来るのが少し遅いなんて文句 言ったっていいだろう?
『いつかしんでいく』———【一年前】
6/16/2024, 12:37:56 PM