一筋の光を見た。
あぁ、そうだ。見た、見たのだ。見たはずなのだ。この目で見て、縋ろうと、得ようとして、手を伸ばした。あの時、確かに伸ばしたのだ。そして、その光は徐々に自分の手に落とされ、膨張し、一気に私を包んだ。私は眩しさで目を瞑ってしまった。
あぁ、そうか。瞑ってしまったのか。私は目を…。自分の造られた体に付いた目などあの光の輝きで潰れて仕舞えば良かったのに、そう覚悟をしていたのに結局は我が身かわいさに走ったのか、私は。
あぁ、なんで。いつもならこんな回想などせずに、「次」を考えているはずだ。いつもなら、口が勝ってに罵る言葉を吐くはずだ。だが、でない。さっきから、空気を鼻で吸って口で吐く、呼吸音しかこの空間に響いていない。
そうか。もう何かをする気力すら、この身体には無いのだ。なら、もうどうでも良い。光は掴めなかったが、その光が全てでは無かった。まだ此処には娯楽がある。身体がある。ノロマだろうが、怠惰だろうが、もう知らん。
あぁ、晴れやかだ。実に晴れやかだ。ありとあらゆる強制から離れた気分はこんなにも良いものなのか。ただ、ただ、楽しい。錯覚まで見えてきた。そう、「一筋の光」(あれ)を見る前より周りが少し明るく見えると言う錯覚を。
11/5/2024, 12:31:09 PM