うに

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カバンを集めるのが趣味だ。どこにも出かけないくせに、ポーチやらトートバッグやらが溜まっていく。
なにかイベントごとがあったりすると、バッグのなかに関連するものを詰める。例えば、映画なら、公式トートバッグを買って、その中にパンフレットとかグッズのアクキーとかを。そしてその一式をそのまま部屋の隅に放り投げて、放置する。そうやって出来たカバンの山の一角が、部屋の少なくない面積を占有している。

片付けることにした。
カバン一つを手に取り、中身を確認する。これは何年か前に行った展示会だな。ポストカードが4枚、シールシートが2枚、クリアファイルが1枚、会場で回したガシャポンが2個。
カバンかけにかけ直す。中身はそのままだ。
次のカバン。知り合いのコンサートに、付き合いで行ったやつか。グシャグシャになった演目リスト、お手製の入場チケット、彼女からお礼にともらった、ちょっとした小物類の詰め合わせ。賞味期限のあるコーヒー豆だけ取り出してある。
これもカバンかけへ。
お次は? おや、これまた随分と古いものが出てきた。大学生の頃、ガチ恋した相手との縁結びを願って、有名な神社にお参りしたときのものだ。出てきたのはおみくじ、それと扇形のペアのお守り。金属製の扇に「えんむすび」と書いてある。これの片方を想い人に渡して、恋愛成就を願うのだそうだ。「えんむすび」と書いてあるお守りを渡す勇気などなく、結局その人とはなんにもならなかった。お守りを袋に戻す。なんとなくおみくじを広げる。大吉。今となってはなんの感情もない。綺麗に畳んで、カバンに戻す。カバンは、カバンかけへ。
それから、次は……

使わないカバンなんか中身ごと捨ててしまえばいいのに、夫にはからかい混じりでそのように言われる。
知ってるんだ、夫は単に、自分の趣味のプラモを飾る場所を確保したくて、私のカバンスペースを狙っているのだということを。

いつまでも捨てられないもの、それは、やっと手に入れた、愛する人との平和な暮らし。一生、捨てるつもりはない。

(お題:いつまでも捨てられないもの)

8/17/2024, 4:57:53 PM