街灯がチカチカ光る薄暗い道。
今日も遅くまで飲んでしまった。
まったく、モテる男は辛いぜ。
足取りが少し覚束ないが、もう少しで家だ。
明日……いや、もう今日か。出勤日じゃないから、ゆっくり休むか……。
「やっと帰ってきたわね」
家の前に、女が立っていた。
「んー?誰だぁ?お前~?」
「酒くっさ……私のこと覚えてないの?」
「んーーー?」
女の顔をよく見ても、思い出せない。
誰だっけ?
多分、いつの日か店に来た女だろう。
「私と約束したでしょ」
「約束ぅ?」
「私と結婚してくれる約束よ」
「そんな約束したっけぇ?」
もしかしたら、適当に相槌を打って約束してしまったのかもしれない。
「やっぱり遊びだったのね。ホスト野郎に恋するんじゃなかった……嘘ついたから針千本飲んでもらうわよ」
女性はバッグからビニール袋を取り出した。
ジャリジャリと音が鳴っていて、袋から何本か針が出ている。
「な、なんだよそれ」
「私と結婚してくれるって指切りげんまんしたのに、嘘ついたからよ。さぁ!飲みなさい!」
「んなもん飲めるかよ!」
一気に酔いが冷め、俺は来た道を走って引き返した。
3/4/2025, 1:14:12 PM