あかるあかり

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『叶わぬ夢』

 この恋は……、

 あのひとは私を、
(好き……嫌い……好き……)

 花占い。好きと囁き花弁をひとひらちぎって、嫌いと呟いてまた花弁をちぎる。
 罪もない花のはなびらを生贄に捧げるように、花占い。

 最後のはなびらを「好き」と共にちぎれたら恋は叶う。「嫌い」で終わってしまったらあのひとの想いは自分にはない。
 だから、残りのはなびらの数の予想がついてしまう前に指も鈍る。
 知ってしまうのが怖かった。たかが占い。されど占い。簡単に一笑にふすことができるくらいなら占いなんて始めない。

 あのひとの隣りにいたい。
 微笑んで、相応しい恋人として、誰からも祝福されて。そう、彼の隣りをいま占めている彼女ではなく私こそが相応しいのだと。

 この恋は、叶うのだろうか。

(幸せになりたい願いが、いまの恋人たちの涙を願うことになっても、私は願っていいのでしょうか)

 花をちぎる指はとうに止まっていた。ゆっくりと半ば花弁を失った野花を投げた。
 ――この恋は叶うのでしょうか。
 涙を、別れを、望むわけではないけれど、その不幸が前提のこの私の恋。

 叶いますか。叶えていいでしょうか。
 いま咲いている恋の花を犠牲にしても。

3/17/2025, 10:21:48 AM